就職氷河期に新卒として就活をした元学生の方たちは、たいへん厳しい時代の波に翻弄されてきました。
新卒入社で思うような結果が得られなかった方々は、当時のつまずきを引きずったまま、長く不安定な就業環境で働かざるを得ないケースが多々見られます。
2016年の総務省統計局による調査では、役員を除く雇用者5372万人のうち、正規職員・従業員は3355万人。前年より51万人増えているとのことです。
しかし一方で、非正規の職員・従業員も2016万人と、前年比で36万人増えています。
中には、あえて非正規という立場を選ぶ人もいるかもしれません。ただ、自分の意に沿わないまま正社員になれずにいる人もいるでしょう。怖いのは、今の状況のままで時間が過ぎてしまうことです。
正社員登用(安定した雇用)への可能性があるうちに、なんとかしてその機会を生かせるよう、まずは様々な情報を得るべきではないでしょうか。
Contents
就職氷河期世代は、負の遺産を背負わされたまま生きている
最初に日本を見舞った就職氷河期は、バブルがはじけて景気が後退し、企業が採用を抑制し始めた90年代に遡ります。
雇用のミスマッチや短期間での解雇事例が大量に生まれ、その影響で新規の求人倍率が「1」を下回っていました。
特に新卒の若者がそのあおりを強く受けてしまい、フリーターや派遣社員など、不安定な職種に就かざるを得なかった時代です。
就職氷河期は大別すると2つの期間になります。
1993年〜2005年(バブル崩壊後の失われた10年)
この時期に大学を卒業した人は、2019年の時点では30代後半から40代後半。前述の調査によると、この年代を含む35才から44才の非正規労働者は、61万人余りです。
2010年〜2013年(リーマンショック後の就職氷河期)
この時期に大学を卒業した人は、2019年の時点では30代前半。この年代を含む25才から34才の非正規労働者は、64万人。
これらの年代で非正規の仕事をしている人たちは、新卒時につまづいてしまった影響が、現在まで続いている場合も多いはず。
今の時代、社会は「固定化」の傾向が見られます。
今、厳しい生活を強いられている人は、今より上へとステップアップする「きっかけ」さえつかめないというケースも少なくないのです。
正社員と非正規の格差もますます際立ってきています。国や自治体も政策やサポートを打ち出していますが、それらが実情に見合ったものなのかどうか、本当に成果が出るまではわかりかねることも。
ただ、そういったサポートを待つばかりではいけません。限られた時間の中で、思いつくだけの「手段」を一人一人がやり続けなければ、現状を打破することは難しいかもしれないのです。
厚労省の氷河期世代支援策
2019年に厚生労働省が発表した、「就職氷河期世代」の人たちへの就労支援や社会参加をサポートする対策として、以下のものが挙げられています。
氷河期世代特化した求人開拓策として、失業者や非正規で働いている人を正社員として雇用した企業に対し、助成金を出す(これまで以上に拡充する)。
全国のハローワークのうち約60カ所に専門窓口を設け、就職相談から職場定着まで一貫した支援を行う。
長期間仕事に就いていない人や引きこもりの人を個別に訪問して相談に乗る「アウトリーチ支援員」を配置。自立を促していく。
他にも、
・不安定就労者の就職支援
・運輸・建設関係など短期間で取得できる資格の習得サポート
・働きながら無料で受講できる講座や訓練実施
など、新規策やこれまで行っていた施策の継続・拡充策が挙げられています。
今後こういった施策が効果を生むかどうか、注目していきたいと思います。
企業も氷河期世代の空洞化に悩んでいる
朝日新聞がこんな記事を掲載したところ、ネットを中心に様々な反響を見ることができました。
40代前半は、まさに就職氷河期で企業が新規採用を控えていた時期。その頃のツケが、今まさに回ってきているという顕著な例です。
「今更大企業がそれを言うか」
「わかりきっていた課題を放置してきた」
「切り捨てた世代にキャリアを求めるという理不尽」
こうした声は当然予想されていることと思われますが、表面化している企業が少ないだけで、日本の多くの企業に人材の空洞化が起こっているのかもしれません。
時代が時代なら、正社員登用への扉は大きく開かれていて、地道にキャリアやスキルを積み上げて、その会社の将来を担う人材に育ってきたかもしれないのに、そうはならなかった。
後悔をしていてもはじまらないので、今の状況で自分がどう生き抜いていくかを見極めることが重要です。
40代の人材不足は、企業にとって死活問題。ただそれは逆に考えれば働く側にとってのチャンスとも言えます。
「自分は非正規だから(40代に求められるような)マネジメントなんてできない…」
「正社員じゃないからスキルなんてたかが知れていいる…」
チャンスを前にしても、そんなふうに下を向いてしまう方も多いでしょう。
ただ、うつむいている人たちはこれまでも同じように考えてしまい、その結果、どうにもならない現在に至っているのではないでしょうか。
本気で足掻くことに尻込みしていては、なかなか現状は変えられません。できないならできないなりに、自分の精一杯を出していくしかありません。
今までチャンスに恵まれなかった人の前に、チャンスの芽が出てきているなら、それをつかむことをためらっている暇はないはずです。
流行遅れのフレーズですが、挑むなら「今でしょ」ということなのです。
一念発起とか、気持ちを新たにすることは、口で言うほど簡単ではありません。しかし、今までよりも少しだけでも力を出してみることで、何かが動くことだってあるのです。
上昇気流に乗れる人と乗れない人、その差はどんどん広がってしまう
現在の景況判断は、迷走している感もありますが、氷河期よりはずいぶんマシになっているのは事実です。
新卒の就職戦線は紛れもなく学生の売り手市場であり、就活イベントでも人気のない職種・企業のブースほどあの手この手で学生の興味を引こうと必死です。
転職市場においても、即戦力・充分なキャリア・スキルを持った層の転職は、若い層からシニアまで、盛んに行われています。
そんな状況にあっても、就職氷河期世代で意に沿わない仕事をしている人たちは、売り手市場の恩恵を受けるところまでは至っていない人が多いでしょう。
20代を過ぎ30代となるに連れ、だんだんと転職の間口も狭まっていきます。年齢制限はあからさまにあるとは言えないものの、内部的に年齢上限を設定しているケースはあります。
フリーターや非正規の時代が長ければ、スキルを向上させることも、キャリアを蓄積する時間もないままに年を重ねてきたことは否めません。
ただ少しでも今の生活に危機感を持っているなら、まずは行動です。
より的確な情報を得て、成果を出せる行動をするためには、自分一人でがんばるよりも「その道のプロ」に力を借りてみるという方法もあります(その道のプロの代表例は、転職エージェントです)。
もしも今まで、自分だけでやってきた就職・転職活動がうまくいかなかったなら、自分自身を客観的に見つめてくれる第三者に委ねるのも、これまでにない一手を打つことになります。
何より、年を重ねるほど、ステップアップのためのチャンス自体が減っていきます。
今目の前に、飛びつくべきかどうか迷っている選択肢があったなら、迷わず選びとってがむしゃらに進んでみること。
何もせずスルーしてしまったら、もうチャンスは巡ってこないかもしれません。年を重ねるとは、そういうことなのです。
非正規から正社員への道。正社員化を進める企業を探してみる
時代の流れも後押ししている感がありますが、正社員化を推進している企業はいくつもあります。
実際に1000人以上の規模で非正規雇用から正社員化を実現させた主な企業を列挙してみます。
・高島屋
・Jフロントリテイリング
・日本航空
・日本生命
・イケアジャパン
・イオンリテール
大手ばかり…と思う方も多いでしょうが、上記以外にも1000人に満たない規模での正社員化を進めている企業は数多くあり、中小企業でもそうした流れは根付きつつあります。
正社員化をすることで、当然企業側が負担する人件費は大きくアップします。そうまでして企業が正社員化を推し進める背景には、空前の人手不足という事情があります。
人口減少・少子高齢化の進む現代では、労働者人口もどんどん減少していきます。今後数十年単位で見ると、会社の売り上げは良くても社員が確保できずに倒産する「人手不足倒産」というケースは一層増加するだろうと言われています。
人材確保こそが、企業が生き残るための不可欠な条件となっているのです。
そのために、今いる非正規社員を正社員登用することで繋ぎ止め、且つ待遇改善などモチベーションアップに力を入れている企業が増えているのです。
正社員化を推進している「狙い目の」業界
実は正社員化を進めている「業界」は、今のところ2極化しています。
積極的なのは、流通・小売・サービス業など。
一方で、まだ動きの少ないのは、銀行・マスコミ・メーカーなどといった業界です。
依然人を採用しやすい業界はまだ正社員化の流れは鈍く、離職者が多くすでに人手不足が叫ばれている業界がどんどん正社員化に注力している、という傾向がみられます。
(銀行などは離職者も少なくありませんが、待遇の良さで囲い込みができていると言えます)
もしもあなたが今働いている会社が、人手不足に該当する会社・業界であれば、このチャンスを逃す手はありません。
仮に正社員化の話が出ていなくても、上層部は人材確保への道を模索している可能性はあります。上司に相談したり、自らアピールするなどして、積極的に動いてみる価値はあるでしょう。
また運悪くそうした話題がない、非正規のままでいる可能性が高い会社・業界に在籍中の人は、今の職場以外に目を向けてみるタイミングかもしれません。
景気や世界情勢などはまったく不安定であり、今のこの状況が数年後にはどうなるかは、誰にもわかりません。
そんな中で「良い流れ」を見逃してしまうのは、非常にもったいない(ある意味でリスキーでさえある)と考えます。
非正規に慣れてしまった人にも扉は開かれている
これまで非正規雇用を進めてきた企業が、一転して正社員化へと舵を切っている。
そうした流れを、快く思えない方も多いでしょう。時代が少し違うだけで、なぜこんなにも待遇が変わってしまうのかと。
ただ、それを嘆いていても始まりません。大事なことは、今の自分の状況を少しでも改善し、将来の不安をできるだけ減らせるような道へと進むことです。
正社員となれば、非正規の時よりも仕事の質が上がり、責任も大きくなることが予想されます。派遣など非正規雇用に慣れてしまった人の中には、そうした責任の負担が重荷に感じられてしまい「今のままでも、まあいいか…」と考えてしまう人もいるかもしれません。それは、個人の自由意思であり、他の誰かがとやかく言うことではないでしょう。
ただ、少なくとも、現在の生活の不満、将来への不安を抱いているのであれば、意を決して一歩踏み込んでみることは価値のあることです。
非正規のままで、さほど責任のない仕事であったとしても、この先一生働き続けていかなくてはならないことに変わりありません。
むしろ非正規であるために、年をとるたびに仕事が厳しくなることは大いに考えられます。
働くということに何かしらの意味や喜びを見出したいのなら、正社員化という選択肢は、とても魅力的なものだと思うのです。
数年、数十年後に、「あの時ためらわずに挑戦しておくべきだったかな…」と後悔しても、遅いのです。