Web業界は若い感性を持つ人のフィールドであり、年長者はだんだんとドロップアウトしていく業界。
まして未経験者なんて手を出せる仕事じゃない…というイメージを抱いている人は、少なくないかもしれません。
実際、身につけるべき知識やスキルの質・量ともに半端なものではなく、また業界的に労働時間の長さや仕事の大変さがクローズアップされていて、若い人でなければ知力・体力ともについていけない、というのが共通認識でしょうか。
しかし、Webは未経験だという30代・40代であっても、適切な方法を選んでいけば、Web業界で食べていくことは可能です。
何より、ますますインターネットの活用が必須となっていく現代で、仕事としてはもちろん、基礎知識としてのWeb技術やネットリテラシー習得は、生きていくためにも身につけるべきもの。
今回は、30代・40代でもWeb企画・制作に関わる仕事をしていくための、いくつかのノウハウを解説していきます。
Contents
Webの世界は未経験。まずは基礎中の基礎として、Webの仕事の種類と役割を知ろう
Web業界の職種はどんなものがあるのか。まずはそれぞれの仕事の内容・役割を理解して、自分が目指すべき仕事はどれか、どの職種に挑戦してみたいかを整理していきます。
Webプロデューサー
Webプロデューサーは、Webサイト制作に関する総指揮者です。
プロジェクト全体の予算管理をはじめ、スタッフ構成、スケジュール管理、クライアントとの交渉、そしてサイト全体のクオリティに関して厳しくチェックします。
お客様であるクライアントと、制作スタッフチーム全体との関係をしっかり築き、制作・運用に滞りがないように進行させることが重要です。
Webの知識やスキルはもちろん、スタッフのマネジメント能力、トラブル時の柔軟な対応力、そして必要な法律知識(薬事法や個人情報保護法など)といった、幅広い能力が求められます。
担当する業界の業務知識も必須であることは、前提ですね。
Webディレクター
Webプロデューサーが全体の総指揮とすれば、Webディレクターは制作現場の現場監督です。実際に手を動かすスタッフのすぐ近くで、適切な指示(ディレクション)を行いながらプロジェクトを進めていきます。
担当する内容はWebプロデューサーと重なる部分もありますが、クライアントとの折衝や制作進行管理、要件定義(※1)の作成、サイトのクオリティ管理などを行います。
また会社によっては、営業的な立ち回りも求められることがあります。クライアントの担当者と一番やり取りする機会が多い仕事なので、現在進行中の仕事はもちろん、新規の仕事オファー対応やセールスなどを行うことも多いです。
(※1)要件定義とは、サイト制作に関して実装すべき機能や性能を明確に規定していく作業のこと。サーバ規定や使用する言語、対応ブラウザなど多岐にわたる内容を詳細に詰めていき、サイト開発作業の指針とします。
Webプランナー
Webプランナーは、サイト全体の設計を担当します。
Webプランナーに関しては、特化した職種として担当者がいる会社もありますが、Webディレクターや(スキルのある)Webデザイナーが兼任する場合もあります。
具体的には、要件定義や仕様を基に、サイトの設計図(ワイヤーフレーム)(※2)を構成していきます。いわゆる「情報設計」を担当します。
(※2)ワイヤーフレームとは、いわばWebページのレイアウトのこと。どこに何を配置するか、メニューの種類は、といった「デザイン・装飾以外の内容」を決めていきます。
Webデザイナー
Webデザイナーは、Webサイト全体のデザインを担当します。
サイトの目的や仕様・ワイヤーフレームを理解した上で、それらをWebページとして作り上げていきます。
サイト全体のデザイントーンを描きながら、ビジュアル作成、画像のチョイス・加工、フォント設定、各パーツの構成・配置・配色、といった多岐にわたるデザイン要素をすべて形にします。
Webサイトならではのユーザーの操作性や見やすさ(U.I)もしっかりと考慮して、もっとも適切なページデザインを実現していきます。
一般的には、AdobeのPhotoshopでデザイン制作を行います。Illustratorもパーツによって使う場合がありますが、Webページ全体はPhotoshopを使用することが多いでしょう。
またDreamweaverでコーディング後のデータを確認することもあります。
(Photoshop、Illustrator、Dreamweaverはどれも一般的なWebサイト構築には必要となるソフトです)
コーダー、Webプログラマー
厳密には、コーダー(マークアップエンジニアとも呼ばれます)は、Webデザインを基にHTMLやCSSでWebページを作っていく仕事。
WebプログラマーはJavaScriptなどブラウザ上で動作するプログラムを構築する仕事。
ですが、プログラマーの多くは複数の言語を扱うことになり、両者を兼任することも多いです。
また、サーバ周りやデータベースに関する領域も担当する、エンジニア的役割を求められることもあり、プログラムとシステム関連の幅広いスキルが必要となります。
このあたりは会社によって非常に差があり、コーダー、プログラマー、エンジニアとそれぞれに専門の担当者がいることもあります。
Web関連のスキルがもっとも必要となる仕事です。
その他
Webマーケッター:SEO、SEMなどを専門とし、アクセス解析やWeb集客企画などを策定する。
ネットワークエンジニア:主に社内ネットワークの構築・保守を担当する。
コンテンツライター:サイト全体のコピーワーク、各コンテンツの原稿を作成する。
これらの仕事も大切な役割を担うものですが、専任スタッフを置かなかったり、外部に発注したりする場合も多く見られます。
Webの仕事はリモートワークに適している
Webの仕事も多岐にわたりますが、その多くの作業でリモートワークに徹することが可能です。
自宅やワークスペースでの制作環境が整っていれば、オフィスに出勤したりクライアント先に出向くことがなくなるケースはかなり多いです。
(ケース・バイ・ケースなので、「ゼロ」になるとは言い切れませんが)
キックオフのミーティングから、各業務の振り分け、各々の作業、日々の進行チェック、疑問点の確認、各種テストやフィードバック等々…ほぼすべての制作業務は、その気になればすべてオンラインで完結できるようになっています。
コロナ禍においてリモートワークを推進する企業もかなり増えました。クライアント側の意識が変わってきているのも大きな違いです。
クライアントとの打ち合わせも、オンライン上で行うことが前提となっている場合が、格段に増えたのではないでしょうか。
既存の営業スタイル・顧客対応にありがちだった、「実際に出向いて、お客様とヒザ付き合わせて話をする」というやり方が、必ずしも一般的ではなくなってきたのです。
Web業界はその流れがますます顕著になってきていると感じます。そしてこの流れは、アフターコロナの社会でも逆戻りすることはないかもしれません。
各個人がスキルを発揮できて、オーダーにきちんと応えるだけの仕事ができれば、リモートワークこそがWebに最適なワークスタイルである…とは言い過ぎでしょうか。
未経験の30代・40代が狙うべき職種はWebディレクター
非常に多岐にわたるWebの仕事の中で、0(ゼロ)から知識や技術を習得していきたい30代・40代が狙うべき職種は、限られてきます。
狙うべきは、ズバリ「Webディレクター」です。
将来的には上級職であるWebプロデューサーを目指して、まずはWebディレクターとして経験を積むことをおすすめします。
Webデザイナー、プログラマーなど、実際に「手を動かす」仕事は本当に厳しいです。
未経験からでも必死で学べば、ある程度の知識やスキルは身につけられます。ただ、若い頃からIT・Webに関しての専門技術を学び、実践してきた人でも試行錯誤の日々を送り続けているのがWeb業界です。
付け焼き刃のスキルでそのまま実際の仕事(プログラミングなど)を担当したとしても、徹夜続きの修羅場を繰り返したあげく、結局納品できる品質まで到底届かない代物をつくってしまう、ということが現実にあるのです。
もちろんそんなものは納品できません。(実際には、そうなる前に周りのスタッフがフォローしたりもしますが…)
「未経験者応募可」であったとしても、その職種がWebプログラマー、コーダーの場合は、避けた方が無難でしょう。
そして、「未経験だけどWebディレクターを狙う!」といっても、本当にまったくのど素人のままで採用してくれる会社はありません。
(あったとしてもスタッフの出入りが激しいブラック企業の可能性が高い…かも)
Web業界を志すのであれば、あらかじめ、目的を持って自ら学び、少しでもWebスキルを身につけて採用試験に臨みましょう。
Webを未経験から学ぶための方法を、次に列挙してみます。
ハローワークの職業訓練でWebスキルを学ぶ
現在無職で、ハローワークに登録している人であれば、職業訓練のWebクリエイターコースなどを利用することができます。
一般的には、基礎講座では、「HTMLとはどんな言語か」「テキストをWebページに表示させるには」といった基礎中の基礎から、JavaScriptを使った簡単なプログラム作成など、Webの初心者スキルを学べます。
基礎・応用とコースがあるかどうかなど、その内容は各都道府県・自治体によって変わってきます。概ね、「Webデザインを学ぶコース」と「Webプログラミングを学ぶコース」は分かれているようです。
生活状況によっては給付金をもらいながら受講することも可能です。詳細は最寄りのハローワークにお尋ねください。
独学でWebの基礎を学ぶ
Webの基礎中の基礎は、Web関連の書籍や、無料で公開されている様々なWebスキル習得サイトで学ぶことが可能です。
ただその場合は、すべて自分一人ではじめ、知識や技術の習得具合も自分で判断していく必要があります。
そこがズレてしまうと、すべての努力が無駄に終わります。
最近ではよく、
「WordPressさえできればなんとかなるよ」
といった提案をするサイトもあるようですが、実際はそれだけではなんともなりません。
(自分で事業を立ち上げるなら別ですが…)
有名なサイトですが、まずは「ドットインストール」でプログラミングを学んでみるのは有効です。
Webの基礎となる部分をしっかりと自分の血肉にして、あなた自身が積み上げてきたキャリアを重ね合わせることができれば、立派な個性としてアピールできるようになります。
Webスクールで効率よく学ぶ
世の中には星の数ほどWebスクールがありますが、本当に未経験者にとって有効なものは少ないのが現状です。
Web業界で働いている人が対象の、より高度なスキルアップ・キャリアアップ転職をめざすタイプのスクールは、著名なところがいくつもあります。
ただ、未経験者は当然そこには入れません。
未経験でスクールを探すためのポイントは、
という点でしょう。
未経験からWeb業界への転職。Webディレクターはこれまでの経験も生かせる仕事
職種の項目でも述べていますが、Webディレクターの担当範囲は幅広く、中でも「クライアントとの折衝」「営業的な立ち回り」といった役割も担うことが多い仕事です。
まさにそれこそが、30代・40代がこれまで培ってきた経験を生かすべきポイントになります。
営業職を経験してきた人であればそのまま折衝スキルとして活用できますし、過ごしてきた分野によってそれぞれ特化した業務知識を生かすことも可能です。
一例を挙げるとすると、たとえば自動車製造に関わってきたのであれば、自動車関連メーカーのWebサイト制作に生かせる部分は非常に多いでしょうし、応用できるポイントは多彩であるはずです。
まさにその点が、Webを専門に生業にしてきた人との違いです。
営業現場での生きた情報、流通でも製造でも、販売でも教育でも、現場を経験してきた人にしかわからないことをWebサイト制作に反映できたなら、それが自分の強みとなるのです。
もちろん、一定の水準以上のWeb知識は必須となります。入社前の自己学習と、日々の努力は欠かせないと考えるべきです。
その上で、これまで過ごしてきた経歴を生かしたその人ならではの「Webディレクション・メリット」というものを確立していくのです。
書類選考時や面接時にもその点をアピールすることで、入社後の貢献度合を充分に伝えることが可能です。
入社後は、一つひとつの仕事がそのまま実績となり、また新たなスキル習得の礎となります(もちろん、学ぶための仕事であるわけはなく、すべて最高の品質で納品するのは前提ですが)。
あなたが、30代・40代で本気でWeb業界への転職を志すのであれば。
あなた自身のキャリアに支えられた、自分にしかできない&自分にしかなれないWebディレクターというものを、ぜひ目指してみてください。